【経済トピックスNo.12】「投資活動の二分化、住宅と設備投資」(宮脇淳)(2025年12月1日)
「投資活動の二分化、住宅と設備投資」
2025年後半に入り日本経済全体にブレーキがかかっています。その主因は、国内需要たる「内需」の低迷にあります。内需は25年1-3月期をピークに大きく減速しています。減速の主因は消費活動の低迷、そして住宅投資の大幅減にあります。一方、「外需」は25年後半、成長に対してプラス寄与となりましたが、これは原油価格低下が主因でありトランプ関税の不透明感が払拭されたわけではありません。
日本経済の投資活動は、大きく二分化しています。設備投資は比較的堅調に推移している一方、住宅投資は大きく落ち込んでいます。この落ち込みは、周知のとおり建築規制強化にあります。そのマイナスの影響が7-9月から強く顕在化しています。これに対して、企業の設備投資(オフィスビル建築含む)は、トランプ関税等によるサプライチェーンの変化、デバイス投資拡充などにより構造的な転換と国内投資重視が必要となっており堅調な推移です。
こうした状況を寄与度で見ると、企業の設備投資は前述のとおり日本経済成長に対して安定的に2024年以降ほぼプラスで寄与していますが、住宅投資は25年前半の駆け込み着工の反動も加わり、落ち込みが大きくなっていることが分かります(図1)。
今回の住宅投資の減少が規制強化という構造的要因であることから、落ち込み幅は改善しても、少なくとも2026年前半は経済データとしても低迷し、その後も日本銀行の政策金利の行方、インフレ圧力等を踏まえると26年は厳しい状況が続くことが懸念されます。インフレ圧力を示すデフレーターが日本経済全体の「GDP」や企業の「設備投資」に比べて住宅投資のデフレーターが大きく上昇していることが分かります(図2)。コスト面からも住宅投資に対する厳しい環境が読み取れます。この結果、帝国データバンクの倒産情報によると、工事現業関係の分野を中心に建設関係企業の倒産が増加し始めています。
日本経済の年間600兆円台の国民所得は、大きく「賃金(雇用者所得)」・「経常収益(法人所得)」・「設備投資」に配分されます。人手不足の中で「賃金」は引続き上昇にあり、経常収益と設備投資への分配を抑制する要因となります。そして、企業の設備投資はサプライチェーン、デジタル化等で構造的に投資が不可避とすれば、最後に経常利益ベースの法人所得を圧迫する要因となります。とくに、住宅部門では需要が構造的に変化・減少する局面にあり、フリーキャッシュフロー、剰余金等企業経営の劣化には留意していく必要があります。


(資料)内閣府「国民所得統計」
宮脇淳(みやわきあつし)
株式会社日本政策総研代表取締役社長
北海道大学名誉教授