レポート・コラム

【Opinion】日本の政府債務残高問題(宮脇淳)(2026年8月)

 日本の政府債務残高は、増加傾向にあります。世界のマーケットでも日本の財政赤字は注目され、円安の流れを根強くするひとつの要因となっています。高市政権は「責任ある積極財政」を基本姿勢に、財政の健全化へ配慮しつつ、財政支出を拡大する政策を選択しています。この基本姿勢における「健全化」指標として提示されているのが、政府債務の純額残高となります。従来のプライマリーバランスから債務残高の対GDP比を提示しています。この中心となるのが政府債務の考え方となります。

■政府債務残高の意味

 2000年度以降の日本の政府債務残高をみると、2026年度当初ベースで約1400兆円に達しています(1)。この数字が「総額」の政府債務残高です。日本経済の名目GDP675兆円(20251-3月期)であり、政府債務残高は経済規模の2倍以上に達しています。

 一方で、「純額」の政府債務残高とは、負債の政府債務残高だけを見るのではなく、日本一国として資産を持っている点に着目する見方です。たとえば、図2は、日本の家計の金融資産残高です。2024年からの推移をみても、投資信託や株式を中心に増加を続けており、すでに2000兆円を超えています。最も広く「一国」で見る「純額」は、総額の政府債務残高から国民を含めた金融資産を差し引いた残高を意味します。この視点では、政府債務残高は大きく減少します。もちろん、家計も住宅ローン等負債を抱えており、家計の純額金融資産は減少するため単純に差し引くことはできません。しかし、少なくとも総額の政府債務残高は大きく減少し、日本の財政運営の「責任ある積極財政」の姿勢を日本経済全体として裏付ける根拠ともなります。

 一国ではなく国と地方自治体の政府部門だけを取り上げて、総額債務残高と金融資産を把握し政府部門の純額債務残高を計算すると2025年で600兆円前後の債務残高となり、1年間の日本経済GDP規模より小さくなります。日本の政府債務残高は、大きく減少します。

■「純額」は財政健全性を示すか

 確かに、負債だけでなく資産を加味して判断することは重要です。この視点に立てば、データ的にも日本財政は健全に運営されているとも言えます。しかし、データ的に資産と負債の両建てで見ることと、実際に債務返済が可能かの視点とは異なります。企業でも沢山の不動産等資産を有していても、現実に流動性が確保されなければ経営は苦しくなり倒産することもあります。

 第1の具体的問題点は、政府の金融資産には、国民が国に預けた社会保障基金等が含まれ、国民に将来的に支給すべき預かり資金が資産とされていることです。この資金を政府債務の返済に使用することの妥当性や現実性がどれだけあるかが問題となります。すなわち、流動性の問題です。

 第2は、長期国債等のほとんどは国内で保有されていても、短期の借入金は外国に依存している点が大きいことです。このため、日本に入っている資金の安定的確保が必要となります。その意味からの、政府債務に対する実質的な信頼性確保は重要となります。

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