レポート・コラム

【若生幸也の眼】地方自治体における事務事業・業務プロセスの標準化(1)(2022年5月10日)

地方自治体における事務事業・業務プロセスの標準化(1)
―事務事業単位の標準化とベストプラクティスの標準化

若生幸也

標準化とは、組織内外の合意を得て規格を策定し、当該規格を普及する⾏為を指す。昨今の地方自治体における「標準化」と言えば、令和7(2025)年度までに自治体DXの重点取組事項として実施が求められている「自治体システム標準化」が思い浮かぶ。その前提として目指すべきは地方自治体における事務事業・業務プロセスの標準化である。本連載では広く事務事業・業務プロセスの標準化の観点・契機を示す。

1.事務事業単位の標準化

事務事業の標準化のためには、まず標準化に向けた基準を明確化し基準に沿ったすり合わせを通じ事務事業単位の標準化を図る。具体的には、総合計画(実施計画事業)の事務事業単位、行政評価の事務事業単位、予算の事務事業単位が異なる課題が挙げられる。事務事業単位が異なると、PDCAサイクルを回すための基礎情報の生成に極めて大きな負荷が毎回かかる。総合計画(実施計画)と行政評価の事務事業単位が異なる場合、PLANからCHECKの流れを形成することが困難になる。また行政評価と予算の事務事業単位が異なる場合、評価の基礎情報である事業予算情報を直接参照することが困難になる。

このため、評価対象事務事業単位を実施計画・行政評価・予算単位で統一化することが標準化の起点となる。PDCAサイクルの観点から言えば、実施計画の事務事業単位が基準となり、行政評価と予算の事務事業単位を可能な限り実施計画の事務事業単位に標準化することが求められる。それぞれの単位が標準化されることで、実施計画における事務事業に対する行政評価の事務事業の単位がそろい、評価の前提データとなる予算情報も組み替えなく直接参照可能となる。

2.ベストプラクティス観点の標準化

相対的な標準化基準として、同一・類似目的の事務事業や同一・同種内容の事務事業をグループ化して整理・分析することで課題が明確化する。地方自治体では、同一・類似目的の事務事業や同一・同種内容の事務事業を行っていても、各所管部門がそれぞれ実施しているため、横並びで比較し検証するための情報が生成されておらず、各事務事業のベストプラクティスを情報として共有し事務事業を見直す取組はあまり行われていない。

例えば、防災関連事業群は同一・類似目的の事務事業として位置付けられ、広報やシティプロモーション、地方議会広報に関する事業群、イベント・講演会に関連する事業群、維持管理に関連する事業群はそれぞれ同一・同種内容の事務事業として位置付けられる。同一・同種事務事業の比較例として、広報分野を想定すると、既存の紙媒体で届けても閲読率の低い30代から40代を中心的なターゲットとして、プッシュ型で情報通知が可能なコミュニケーションメディアであるLINEなどを活用している所管部門がある。この広報活動により30代から40代の広報閲読率が上昇している場合、事務事業の標準化基準となる。このターゲットを絞り適切な手法を使用している情報を他の所管部門に共有する場を作ることで、同様の課題を有する事務事業所管部門に気づきを与え、コミュニケーションメディアを広報に活用することが標準的な手法となるように促し、標準化を図ることができる。

若生幸也(わかおたつや)
日本政策総研副理事長兼研究主幹
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員

【若生幸也の眼】「地方自治体における事務事業・業務プロセスの標準化(1)」(若生幸也)
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