レポート・コラム

【経済データを見る眼】消費動向とインフレ(2022年5月17日)

消費動向とインフレ

宮脇 淳

(資料)「現状・先行き」は、内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。「大企業景況指数」は、日本銀行「短期経済観測」より作成。(注)2022年3月期は、マクロモデルによる予測値。

日本経済の動向を「街角の景気感覚」の把握を目的とする「景気ウォッチャー調査」(内閣府)でみると、2022年3月調査で現状・先行き判断ともに改善する傾向を示していた。特に先行きに対しては、経済社会活動の再開本格化に向けた期待感が生じている。これに対して、日本企業の景況観を「短期経済観測」(日本銀行)でみると、年明け以降、悪化することが見込まれた。2021年12月調査段階までは製造業・非製造業を問わず、大企業・中小企業を問わず改善方向の認識だったものの、年明け以降のオミクロン株感染再拡大、ロシアのウクライナ侵攻等グローバル経済の構図への根本的変化要因の発生、加えて、原油や天然ガスの価格上昇、円安の進行による交易条件の悪化、サプライチェーン問題再燃による「企業物価」の上昇圧力拡大などが企業側の景況感を悪化させている。

こうした企業の景況感悪化は、街角の景況感にも影響を与え4月以降は慎重な動向が強まらざるを得ない。内閣府の4月実施「消費動向調査」の「消費者意識指標」では、前月の3月対比で雇用に対する意識は若干改善したものの、「収入の増え方」、「耐久消費財の買い時判断」は悪くなるとする方向の見方が増えており、その結果、「暮らし向き」全体も悪いとする判断が増加している。「暮らし向き」の悪化は、2-4月間で6.6%ポイント悪化しており、年明け以降、企業同様に慎重な姿勢が表れている。こうした消費に対する慎重な姿勢の主因は、インフレ圧力の増大にある。4月調査で物価が今後5%以上上昇するとする見方が55.7%に達し、2%以上を加えると全体の8割以上を占めるに至っている。昨年の10月段階では60%前後だった数字が急速に上昇しており、消費者の物価上昇への懸念が強く表れる結果となっている。今後の金融政策や為替動向とともに留意すべき点となる。

宮脇 淳
日本政策総研理事長兼取締役
北海道大学名誉教授

【経済データを見る眼】「消費動向とインフレ」(宮脇淳).pdf
TOP