レポート・コラム

【若生幸也の眼】Twitterアカウントの凍結とプラットフォーマー責任(2023年2月7日)

Twitterアカウントの凍結とプラットフォーマー責任

若生幸也

筆者のTwitterアカウント(@twakao)が2月3日(金)0時50分に凍結されたことに気づいた。ちなみに、凍結とはTwitterサービスの利用が停止されることでサービスへのログインはできるがツイート(書き込み)することもできないし、フォロー・フォロワーもゼロになる。凍結解除されると元の状態に戻る。

Twitterを見ていたところ、「ご利用のアカウントは永久凍結されています」という文言がいきなり表示された。実名でアカウントを運用していたこともあり、公序良俗に反するようなツイートを控え、建設的なツイートをするように努めており思い当たる節はない。

しかし、「永久凍結」と表示された人がちらほらいるようで、いろいろと「永久凍結」という文言で検索し調べてみると、質問受付サービスのマシュマロを利用しているTwitterアカウントが永久凍結の憂き目にあっていることが分かった。それも3日に1回程度の「マシュマロで質問受付中」という自動投稿botが問題視されているようだ。

とはいえ、このマシュマロの自動投稿botが問題視されている以上に、Twitterはそもそも問題発言にまみれている。これを解決する方が先ではないかと思いつつ、筆者のアカウントは凍結されているので異議申立をすることにした。ここまでは対処方法の検索がスムーズに行き、その後フォームから異議申立を提出したのが1時20分。ここまでわずか30分なので対応は早い方だった。

その後自動応答システムでTwitterからメールが来た。「メールが来たからいずれ解消されるだろう」と眠りにつくことにした。

翌朝は京都で地方議会総合研究所の研修講師で自治体DXと自治体経営をテーマに講義。ほぼ10時から17時まで息つく暇もなく時間が過ぎる。そろそろ凍結解除されているかなと思い、改めてメールをよくよく読んでみると「このメッセージに返信し、このメールが使用可能なことを確認してください」という文言を発見。しまった。メール文が分かりづらいぞ、Twitter社。

返信メールを送ったのは3日(金)17時38分。一向に返事が来ないと思っていたらMailer-Deamonから届かないとお返事。つまりTwitter社のメールサーバが大量メールを捌けずダウンしている。何度も再送がかかっているが、7日(火)22時時点で凍結は解除されていない。メールサーバの増強を行ってから精度高く大量凍結してほしいものである。

ここまでが筆者のTwitterアカウント凍結の顛末である。この事象から考えたことがいくつかある。

1つ目はプラットフォーマーとしての責任である。筆者はあくまで社名・実名を出しているとはいえ個人利用の域を出ず、商用利用しているわけではない。このためここまでのサービス利用ができなくてもほとんど問題はない。むしろ研修講師をしているときや相手との話
の中で「実はいま私のTwitterアカウントが凍結されてまして…」「えっ!なぜ?」という相手の驚く顔を見ることのできる特典・ネタとしてフル活用しているくらいだ。

しかし商用利用している場合はどうだろうか。情報発信チャネルのひとつが完全にふさがれることになる。イーロンマスクの買収以降、Twitter社の動きはやや不可解な点が多い。基本は膨大な赤字を解消するための様々な有料化施策であるが、不安定性と不確実性を増しているとも言える。なお、有料化施策のTwitter Blue利用者も容赦なく凍結されているため、商用利用のために有料化対応していても今回の事象はマシュマロを利用し自動投稿機能を使っていると防げない。しかしこの手のSNSは無料ユーザであってもコンテンツを充実させるのに多大な貢献をしている場合もあることは改めて認識しておきたい。国内のTwitter普及率は41.6%(NTTドコモモバイル社会研究所「2022年一般向けモバイル動向調査」)である。LINEの普及率は圧倒的であるが、少なくともインスタグラムやFacebook、TikTokよりは普及率が高い水準にある。

2つ目は広報チャネルの複線化の必要性である。筆者の研修ではよく「"母屋"のウェブサイトが汚いのに"離れ"のSNSだけきれいにしていても意味はないです」と言う。幸いにして、このように自由度の高い母屋を持ち、Facebookやその他SNSなどの第二・第三の離れを持つ筆者にはチャネルがなくなることはないが、「Twitterを(なぜか)実名でやっている公共コンサルの若生さん」という約12年間使ってきた稀有な立ち位置は今回で失われるかもしれない。確かに初対面の方に「フォローはしていないのですが、毎朝若生さんのツイート見ています」という方もありがたいことにそれなりの数いらっしゃった。そういった方々は心配されているかもしれないなと思い、今回このコラムを書くことにした。私は元気です。

3つ目はID連携のリスクである。様々なウェブサービス利用時にIDやパスワードを求められるが、利便性を追求したウェブサービスではID連携でGoogleやTwitterなどのプラットフォーマーのID・パスワード連携が実現可能となっている。便利なので気軽に使ってしまいがちだが、仮に今回Twitter単独でID連携を様々なウェブサービスで利用していたら、ウェブサービスの利便性を大きく損なっただろう。その意味で、プラットフォーマー責任を考えざるを得ないという1つ目に戻る。

イーロンマスクの買収以降、Twitter社を追われた社員はいきなり社内システムにログインできなくなったという。今回筆者と同様大量凍結の憂き目にあった人たちはこのTwitter社を追われた社員と同様の体験をしたとも言える。これは何とも不快な体験であり、少なくとも筆者は凍結解除されたとしても今回の一件でTwitterに対する興味関心は(これまでも高くなかったが)著しく低下したと言える。今回はその想いの昇華として軽いコラムを書いてみた。

※ちなみに3月3日に1カ月ぶりに凍結解除となりました。

若生幸也(わかおたつや)
日本政策総研副理事長兼研究主幹
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員

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