レポート・コラム

【経済データを見る眼】「企業景況と経常利益」(2022年4月6日)

企業景況と経常利益             宮脇淳★

(資料)日本銀行「日銀短期経済観測」・財務省「法人統計季報」より筆者作成

日本銀行「日銀短期経済観測」により、全国企業の景況を見ると2021年後半に入り改善する傾向を示したものの、年明け以降、悪化する方向を示すことが見込まれる(20223月はモデル予測)。年末までは、製造業・非製造業を問わず、また大企業・中小企業を問わず改善する傾向であった。しかし、年明け以降のオミクロン株感染拡大に加え、①ロシアのウクライナ侵攻等グローバル経済の構図に根本的に変化を与える要因が生じたこと、②原油価格高騰が続くとともに円安傾向が強まり日本の交易条件が悪化していること、などから景況感の悪化が避けられない状況にある。仮に侵攻自体が止まっても、その後の対ロシア政策やウクライナ統治など長期間を費やして整理すべき課題が山積しており、企業の景況感に強い影響を与える状況が続かざるを得ない。

また、財務省「法人統計季報」で企業収益を見ると、2021年前半新型コロナ感染抑制や供給制約の改善傾向などにより前年より大きく経常利益水準が改善しているものの、原油価格高騰等により2021年後半に向けて徐々に改善度合いは低下している。さらに、20221-3月期ではウクライナ問題によるロシア制裁措置を含めたサプライチェーン問題やエネルギー価格問題など不透明感が強いことから、企業の収益動向はさらに鈍化すると見込まれる。

以上の企業の景況感の悪化や収益改善の鈍化は地域経済にも影響を与えると同時に、産業都市、住宅都市等の地域特性によって異なる影響が生じることから地域政策、財政運営においても国全体の動向だけでなく地域のメッシュな情報の収集が今まで以上に重要となる。

宮脇淳(みやわきあつし)
日本政策総研理事長兼取締役
北海道大学名誉教授

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