レポート・コラム

【経済データを見る眼】円安と日本経済(2022年8月9日)

宮脇 淳

円安と日本経済

(資料)日本銀行「時系列統計データ」、米国財務省資料より作成

対ドル為替レートが大きく円安に動いていることは、周知のとおりである。1ドル= 100円台から2022年7月下旬には1ドル130円台後半まで円安が進行している。これまでの長期的な為替動向を見ると固定相場制時代の1ドル=360円から1973年に変動相場制に移行し、1990年代後半以降のいわゆる「失われた30年」の始まりから、100円前後の動きを続けてきた。これまでの円高方向から本格的な円安方向に構造的流れが転換したのか、それとも一時的な市場によるブレなのか注目されるところとなっている。

円安の日本経済に与える影響は、第1に輸入物価を上昇させ、国内のインフレ(企業物価、消費者物価)圧力を高めることである。とくに、日本経済はエネルギーの海外依存が高く、サプライチェーンのグローバル化も進んでおりその影響は大きい。一方で輸出面では、通常は価格競争力を高めることから輸出企業の収益を改善するほか、観光立国との視点からも従来に比べ海外から見た場合、価格が下がりより多くの観光客がメリットを受ける。但し、以上の輸出面の収益改善等がコロナ感染拡大による経済活動への制約等で従来同様のメリットを生み出すに至っていない。

円安の要因は、ウクライナ情勢の悪化、7月27日の米国FRB(連邦準備制度理事会)の0.75%ポイントの利上げ等日米金利差の拡大傾向があるほか、円に対する「安全通貨としての評価」が揺らいでいる点も指摘できる。戦後70年にわたって形成してきた国際政治情勢、グローバル社会の揺らぎが存在する。この再構築も大きな課題となる。

宮脇 淳

日本政策総研理事長兼取締役
北海道大学名誉教授

20220809_経済データを見る眼「円安と日本経済」(宮脇淳).pdf
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